大阪オフィス移転の舞台裏:2019年7月27日、デジタル拠点として再出発
2019年7月27日、弊社は大阪オフィスを北区の旧ビルから中央区本町の新拠点に移転しました。関西エリアでの工務店向けクラウドサービスの導入が本格化する中、単なる住所変更ではなく、顧客との対面ミーティングや現場サポートを強化するための“デジタルショールーム”としての機能を兼ね備えたオフィス設計を目指しました。移転プロジェクト自体も、これまで住宅IoTやスマートホーム導入で培ったノウハウをフル活用し、スケジュール管理・設備移管・ネットワーク再構築を全てデジタルツールで完結させました。
なぜ大阪オフィスを移転したのか
旧オフィスは2016年に開設したもので、当時はスタッフ3名でスタートしました。しかし2019年に入り、関西圏の住宅建築現場でクラウド図面共有システム「Knot」の利用が急拡大。工務店からの問い合わせが月間100件を超え、現地での導入トレーニングやトラブルシューティングの需要が増えました。旧オフィスは会議室が1室しかなく、工務店の経営者と打ち合わせをしながら同時に現場レスのデモを行う余裕がありませんでした。新オフィスの選定条件は、JR・地下鉄から徒5分以内、100平方メートル以上のフロア、そして全室Wi-Fi 6対応の光回線が引けること。最終的に現在の本町駅前のテナントに決まりました。

移転に使ったデジタルツールとプロセス
移転全体を、住宅建築における「工程管理」と同じ考え方で進めました。以下の3つのツールを組み合わせて、現場の混乱を最小限に抑えました。
- タスク管理:Asana — 移転に関わる全23タスクをリスト化し、担当者と期限を設定。引っ越し業者の手配、インターネット開通工事、家具の組み立て指示などを週次レビュー。
- 図面共有:弊社のクラウドシステム(自社内製) — 新オフィスの配線図・照明スイッチ位置・エアコンリモコン位置を、工事関係者とリアルタイム共有。修正指示は全て画面上で完結し、印刷図面は使いませんでした。
- IoTデバイス設定スクリプト — スマートスピーカー、温度センサー、人感センサーなど約20台の初期設定を、移転前日にリモートで一括デプロイしました。この手法は、2018年末に自宅で試したスマートスピーカーの一括設定方法を応用したものです。詳しくは以前の記事「2018年クリスマス、スマートスピーカーが変えた住宅IoTの幕開け」でも触れた方法ですが、今回はさらに手順を簡略化し、現場スタッフがスマホ一つで設定を完了できるようにしました。
移転当日のオペレーション
7月27日土曜日、午前7時に引っ越し業者が入り、スタッフ6名が待機。旧オフィスからサーバー機器やデモ用のスマートホームパネルを運び出す際、全ての機器にQRコードシールを貼り、運び出し・荷ほどき・設置をバーコードスキャンで管理しました。設置後、最初に電源を入れたのはスマート照明のハブ。全灯のペアリングが完了するまで15分。その後エアコン、空気清浄機、ネットワーク機器の順に接続。午後4時には、全てのデバイスがクラウド上で正常稼働していることを確認しました。
新オフィスのIoT構成と工務店向けサービスへの展開
新オフィスは来客用の「スマートホーム体験コーナー」と、スタッフの作業スペースに分かれています。体験コーナーでは以下の5種類のIoT機器を常設し、工務店の経営者や施主が実際に操作しながら導入を検討できるようにしました。
- スマートロック(施解錠の遠隔操作&来客通知)
- 分電盤連携型エネルギー管理システム(消費電力の可視化)
- 温度・湿度・CO2センサー(換気制御とアラート)
- スマートスピーカー(音声操作での照明・空調制御)
- 水漏れセンサー(キッチン・浴室シンク下)
これらの機器は全て、当社のクラウドプラットフォームとAPI連携しており、来客のスマホからでも一時的に操作できるデモ環境を用意しました。この仕組みは、4月の本社移転で培った「現場・顧客・工務店の三者をつなぐデジタル拠点」のコンセプトを大阪にも拡張したものです。本社移転時の詳細は「本社移転で何が変わったか——現場・顧客・工務店、三者をつなぐデジタル拠点の実践」でまとめていますが、今回の大阪オフィスはその実践版と言えます。

移転後の変化:工務店対応の質と量
移転から10日後の8月第1週、早速地元工務店3社が新オフィスを訪問しました。うち2社は、これまで電話やメールのみでやり取りしていたが、「一度実際の住宅IoTに触れてみたい」と来訪。体験コーナーでスマートロックとセンサーの動きを見せたところ、その場で導入を決めたケースもありました。また、オフィス内に小規模な作業スペースを設けたことで、工務店のスタッフが自分のノートPCを持ち込み、当社のクラウドシステムの設定を一緒に行うことも可能になりました。以前はカフェや現場で個別に指導していた手間が大幅に減りました。
意外な副産物:通勤時間削減と情報共有の活性化
新オフィスは主要駅から近いため、スタッフの平均通勤時間が片道約20分短縮されました。その浮いた時間を、毎朝15分の「スマートホーム導入事例共有会」に充てています。これまで東京本社とのWeb会議が中心だった関西スタッフが、自分の言葉で事例を語る機会が増え、顧客対応の質が向上しました。9月には、この共有会で出たアイデアをもとに、新たな水漏れセンサーの設置提案テンプレートを作成。早速、大阪府内の2現場で試験導入が始まっています。
今後:大阪を関西デジタル住宅の実験場に
オフィス移転はゴールではなく、スタートラインです。今後はこの拠点を活用し、関西エリアの工務店と共同で、実際の住宅施工現場でのクラウド図面更新とIoTデバイス連携のテストベッドを設ける計画です。11月には、新オフィスを会場にした「大阪スマートホーム勉強会」を予定しており、6社の工務店が参加を表明しています。また、遠隔地の施主向けに、オフィスのIoT機器を実際に動かしながら説明できるビデオ通話ガイドも準備中です。大阪オフィスが、単なる事務所ではなく、住宅デジタル化の“触れる拠点”として機能し始めています。