ビジネスフェア2019レポト:小規模工務店向けデジタル化の3つのトンド
2019年6月3日、東京ビッグサイトでビジネスフェア2019が開幕。住宅業界のデジタル化に特化した展示会で、主催者発表によると約8,000人の来場者と120社が出展した。筆者は開場から閉場までほぼ全てのブースを回り、特に小規模工務店や個人住宅オーナーにとって実際に使えそうな展示をピックアップした。

1. IoTデバイスとホームネットワークの現場連携
複数のブースで目立ったのは、施工現場から完成後のスマートホーム運用までをまとめてカバーするIoTプラットフォームだ。ある中堅メーカーは壁内に埋め込む温湿度・振動センサーを展示。工事中に基礎コンクリートの養生状態をモニタリングし、完成後はそのまま住まいの環境計測に使えるという。来場者の工務店経営者からは「別々の機器を現場用と顧客用に買い替えずに済む」と評価の声が聞かれた。
ホームネットワーク分野では、東京電力系のグループ企業が電力線通信(PLC)と無線LANを組み合わせたハイブリッド中継器を紹介。鉄筋コンクリート構造の戸建てでも安定した通信を確保できるとし、実際のデモでは2階リビングから地下センサーまで遅延なくデータが届いていた。これらの製品は2020年前半に一般販売開始予定で、工務店向けの施工マニュアルも同時提供される点が実用的だと感じた。
2. 小規模工務店向けクラウド見積・工程管理ツール
ビジネスフェア2019の最大のトピックの一つが、小規模事業者に特化したクラウドツールの充実だ。従来は大手ゼネコン向けの高額なERPしかなかったが、今回は月額数千円から使える見積・工程管理サービスが少なくとも7社から出展されていた。
特に注目を集めたのは、タブレットで現場写真と工程表を同期できる「建匠クラウド」のデモ。職人がその日の作業写真を撮影し、タブレット上で該当工程にドラッグ&ドロップするだけで、施主向けの進捗レポートが自動生成される。デモを見た大阪の工務店代表は「毎週の報告書作成に半日かかっていたが、これなら現場で完結する」と即日導入を検討していた。
2.1 ローコードツールによる自社システムの内製化
もう一つ見逃せないのは、プログラミング知識がなくても自社専用の管理アプリを作れるローコードプラットフォームの展示だ。あるスタートアップ企業は、材料発注から顧客管理までを独自にカスタマイズ可能なテンプレートを提供。工務店が自社の帳票形式に合わせて項目を追加できるため、既存の業務フローを大きく変えずに移行できると説明していた。会場ではその場で簡単な見積書アプリを作るハンズオンデモが行われ、参加者の多くがスマトフォンを操作しながら質問していたのが印象的だった。

3. アフターサービスプラットフォームと住まいのデータ連携
住宅の引き渡し後、長期にわたるメンテナンスや設備交換をデジタルで管理するサービスも複数社がブースを構えていた。その中で特に具体的だったのは、大手住宅設備メーカーとITベンチャーが共同開発した「住まいのカルテ」というサービス。住宅ごとに設置された設備の型番・保証期間・交換推奨時期をクラウド上で管理し、施主のスマートフォンに通知が届く仕組み。施工会社もそのデータを閲覧できるため、点検訪問時に部品を事前に手配できるというメリットを強調していた。
さらに、このプラットフォームには、ユーザー自身が故障を報告する際に、スマートフォンのカメラで設備のQRコードを読み取ると自動的に製品情報と連絡先が入力される機能が備わっていた。デモを見た50代の住宅オーナーは「管理の手間が大幅に減る」と好感触を示していた。ただし、注意点として、こうした連携には施工時のQRコード貼付作業が必須であり、工務店側に初期の手間がかかることも同時に説明されていた。
会場で感じた実務的な注目ポイント
ブースを回る中で、来場者同士の会話から聞こえてきた具体的な悩みも参考になった。多くは「自社のITリテラシーが低く、新しいツールを導入しても現場がついてこない」というもの。これに対し、いくつかの出展社は「最初は無料トライアルで特定の工程だけ使い、慣れてから全面移行する」という段階的導入を推奨していた。ある埼玉の工務店は、実際に自社で実践している導入ロードマップをA4用紙にまとめて配布しており、担当者が来場者と1対1で相談に乗っていたのが印象的だった。
今回のフェアで特に印象的だったのは、大手メーカーだけでなく地域密着型の工務店が自らソリューションを提案するブースが増えたことだ。例えば、埼玉の工務店「木の家づくり」は、自社開発のLINE連携アフタサービスを展示し、来場者から高い関心を集めていた。次回のビジネスフェアは2020年6月を予定しているというが、それまでに各社がどのように展示内容を自社の業務に落とし込むかが、住宅デジタル化の本当の分岐点になるだろう。